日本文明研究所のシンポジウムに参加した時に頂いた本「和食とうま味のミステリー」。麹菌の説明を中心に、和食と日本酒とうま味についての解説が興味深い内容です。
日本酒について多くのページを割いて解説していますが、概ね知っている内容だったので、知りたい人は私に聞いてください(笑)。その他の内容でメモしたいものを下記に引用します。
「もともとは魚の保存食だったものが、いつしかハレの日の美味しい料理へと変貌していく。箱の中に魚とご飯を詰め、上から圧力をかける押し鮨や巻き鮨が考案された。短期間の乳酸発酵をさせ、ご飯の腐敗が進まないようにご飯も一緒に食べるようになる。
しかし、これらの鮨は発酵に時間がかかる。そこで押し鮨をバラしたものが「バラ鮨」となり、乳酸発酵の代わりに酢を加えることで時間短縮を図ったのがチラシ鮨である。それを握ったものが、今日世界的に大発展を遂げた握り寿司というわけだ。」
お寿司の歴史の解説が分かりやすいですね。
「うま味成分は単独でなく合わせることでさらにうま味が増すという相乗効果を持っていることが、現在科学的に解明されている」例えば、うま味を感じる物質であるアミノ酸系の「グルタミン酸とイノシン酸が共存すると、グルタミン酸の閾値は単独の時に比べて百倍も引き下げられる、すなわち、少量のうま味物質で食べた時に美味しく感じるようになる」
と解説され、別の箇所で具体例を挙げています。
「鰹節だけで取る出汁、あるいは昆布だけで取る出汁も美味には違いないが、この二つを組み合わせると、うま味そのものは倍どころか数倍に増す。ところが、関東では鰹出汁は普及したものの、それに昆布出汁を加える食文化は長らく広まらなかった」「すると必然的にうま味の強度は弱くなる。それを補う調味料として濃口醤油は重宝されたのである」
と、うま味の相乗効果を、関東の味付けで説明しています。
調味料と和食の歴史についても紹介しています。
醤(ひしお)から生まれた味噌と醤油。当初は冷用酒として飲用していた味醂。アルコール成分が酢酸菌から酢酸に変化することで、ワインから生まれたビネガーと、日本酒から生まれた米酢。
平安時代に仏教と一緒に取り入れた、肉を使わない僧侶のための精進料理。室町時代の応仁の乱以降に、式三献と三回に分けてお膳を出す武家のための本膳料理。安土桃山時代に旬な食材で温かいものは温かいうちに出す、おもてなしを重視する文化人のための懐石料理。江戸時代に料理本と料理屋の普及により、お金を出せば誰でも食べられる庶民のための天ぷら・寿司・蕎麦・うどん。
。。カバーデザインからは想像できない濃厚な内容ですよ。